マンションの大規模修繕が12年周期とされているのには理由があります。それは国交省が作成している「大規模修繕ガイドライン」の中で、大規模修繕の周期の目安を「12年程度」としているからです。しかし、このガイドラインは、2008年に作られたもののため、現在のマンション建築にはそのまま当てはめられないという意見もあり、長期修繕計画策定時に「12年周期はあくまでも目安」とすることが多いようです。
確かに最近のマンション建築は材料の性能や施工技術が向上しているため、12年経っても目立った老朽化箇所が見られにくくなっており、そのような場合は大規模修繕を行う必要はないかもしれません。マンション管理組合の方も10年目頃から自分たちの建物の老朽化の状況を観察して、いつ頃工事を実施するかべきかを検討されているようです。15年以上の間隔を空けて長期修繕計画を立てる管理組合も増えてきていますね。
では、大規模修繕工事を「いつ行う?」をどうやって決めるのか。まずは部位・部材ごとの一般的な耐用年数から確認してみましょう。
一言で「マンションの劣化」といっても、部位・部材別にいろいろな状況が考えられます。例えば、外壁のタイルが剥がれ落ちそうになっている、階段や手すりの鉄の部分が錆びてきた、給排水管の内部が腐食して水道水から赤く濁る水が出てきた、雨樋にひび割れが発生している…。そうした状況はそれぞれ何年くらいで発生するのでしょうか。
劣化すると…錆が発生。錆を放っておくと鉄部の強度が弱まり、設備の利用に支障をきたすことも。
劣化すると…配管内部に錆や腐食が発生。配管の詰まりや水漏れが起きる可能性も。
劣化すると…外壁材の剥がれや欠損が発生。タイルの剥落が事故につながることも。
劣化すると…ひび割れやボリュームがなくなる「痩せ」が発生。防水効果が低下し、室内への漏水を招くことも。
劣化すると…故障のリスクが高まり、利用できなくなるばかりかエレベーター内に閉じ込められる事故が発生する可能性も。
こうしてみるとわかるように劣化が発生するタイミングは基本的にバラバラです。しかし老朽化が目立ってきた部位ごとに個別に修繕していく場合は費用が高くつくため、これらの劣化した部位をまとめて修繕する大規模修繕という機会が設けられているわけです。部材・設備が傷みはじめる年数は概ね5年〜15年のため、やはり12〜15年程度の周期で大規模修繕を実施するのが良さそうです。
もちろん、一般的な耐用年数とあなたのマンションの状況が同じである保証はありません。例えば、自然の影響を強く受ける場所では劣化が進みやすかったり、よい材料が使用されている建築物では老朽化が進行しにくかったりすると思います。ですから最終的には「どれくらい劣化しているのか」を住民が見極めていくことが必要になるのです。確認する際、以下のチェックポイントも目安にしてください。
チェックリストに当てはまる項目が多い場合は、あなたがお住まいのマンションはすでに黄色信号かもしれません。住み心地を維持するために、老朽化の進行に気づいたらなるべく早期に大規模修繕工事を検討してください。