

マンション大規模修繕を手掛ける業界では古くから、工事の実施時期は「春工事(2月頃〜6月頃)」か「秋工事(8月頃〜12月頃)」のいずれかが望ましいと考えられてきました。なぜこんな考えが生まれたのでしょう。 その理由は、第一に「住民の長期休暇を避ける配慮」からです。夏場にはお盆休みが、冬場には年末年始の長期休暇があります。人が自宅で過ごす時間が増えると、騒音、振動、足場の圧迫感、バルコニーの使用制限などの影響を受けることも多くなり、工事によるストレスが増大します。これを避けるため、施工会社は「長期休暇をまたぐ工事は好まれない」と考え、春と秋に工事を集中させてきました。 また、第二に「気候条件の良さ」があります。春と秋は外壁塗装やシーリング工事など天候の影響を受けやすい工程が、ちょうど梅雨や台風の季節を外れるため、工事の遅延が起こりにくいタイミングでした。こうした背景から、いつの間にか「大規模修繕=春か秋」というイメージが定着していったわけです。しかし、春工事、秋工事の伝統も、近年では必ずしも絶対ではなくなってきており、それ以外の時期に大規模修繕を行うマンションも増えはじめています。

大規模修繕の工事時期が変わりつつある背景には、まず人々の働き方や生活スタイルの変化があります。数十年前と比べると、現代の日本人の働き方は多様化し、休暇の取り方も大きく変化。以前は誰もが同じタイミングで長期休暇を取っていましたが、有休を取得して春や秋に長期休暇を設ける人も増え、休暇のタイミングが分散されるようになりました。おまけにリモートワークもすっかり定着しており、「お盆や年末年始は避けるべき」という工事側の前提は根拠が薄れてきています。 また、工事時期に影響を及ぼしている深刻な問題として、職人不足が挙げられます。建設業界では職人不足が続いており、とくに大規模修繕に関わる職人の確保は年々難しくなっています。春・秋の人気時期に工事が集中してしまうと、職人の取り合いが発生し、結果として「工事費用が割高になる」「着工が思うように進まない」「経験の浅い人材が投入されて品質リスクが出る」といった問題が起こりやすくなります。 そのため、近年では「春・秋の混雑時期からずらす方が合理的」という考え方が広がってきています。また以前なら暑すぎる、寒すぎる時期は塗料が定着しづらいなどの技術的な問題も懸念点でしたが、現在は技術の進歩によって環境に左右されずに施工が行えるようになってきており、こうした進歩も工事時期の自由度を高めているのです。

ここまでお伝えしてきたように、現代の大規模修繕においては、春・秋以外でも、十分に工事が成立するようになってきており、むしろ混雑時期を避ける方がメリットが大きいという状況も生まれています。 実際、混雑期を避けた工事には次のような利点が期待できます。「職人が確保しやすく、工事品質の安定が期待できる」「施工会社のスケジュールが柔軟になり、管理組合の事情を反映しやすい」「見積もりが割高になりにくい」「希望の工事期間を抑えやすい」など、工事時期をずらすことで満足度が高まるケースは少なくないと考えられるのです。 ですから、これからマンション大規模修繕の時期を考える管理組合の皆さんは、古い常識にしばられず、ぜひ自由に実施時期を考えてください。マンションの住民全員にとって都合の良い時期というのは現実的に不可能ですから、最初になにを優先して工期を決めるのかを話し合っておくと、建設的な議論ができると思います。工事時期は、工事全体の成功を左右する大事な要素です。「春か秋か」ではなく「わたしたちに最適なのはいつか」という視点で検討してみてください。

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