皆さんは「マンションの寿命」について考えたことがありますか? 寿命というからには、建物がボロボロに老朽化し、人が住めない状態にまで劣化すること、つまり「建物の物理的な限界=寿命」と考える方も多いのではないでしょうか。 実は、私たちが住むマンションはかなり頑丈にできています。主流である鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合、適切なメンテナンスができていれば50年〜60年以上、場合によっては100年近く維持できると言われています。現代では技術の発展によりさらにその期間は延びており、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(平成25年)によれば、「マンションの寿命は120年で、メンテンナンスにより150年まで延命できる」という研究結果もあるほどです。 ではなぜ、それほど頑丈なマンションなのに定期的に大規模修繕工事が必要なのでしょうか。実はマンションは、建築物として住める状態が維持されていても、その他の理由で人が住めなくなってしまうことがあります。「物理的な寿命」よりも、「コミュニティとしての寿命」がマンションの寿命に大きく関わってくるのです。
新築マンションに人が集まるのは当然です。なぜなら、外観も内観もきれいですし、最新設備なども完備しており、“ここに住みたい”と思わせる数々の工夫によって、人はそこに理想の生活を思い描くことができるからです。しかし、そんな新築マンションも年数が経過していくと状況が変わってきます。 「外壁が何だか汚れてきたし、全体的に暗い印象がある」「いろいろガマンすることが増えてきたな」。そんなふうに感じる老朽化の状況が発生すると、マンションの住民の不満は溜まり、少しずつ住み替えをする人が増えて、住民が減少してしまいます。 この後、住民が減少したマンションでは、管理費や修繕積立金を十分に徴収できなくなるため、世帯あたりの管理費や修繕積立金の納付額が割高になってしまうことが考えられますし、そもそも管理組合の機能が十分に働かなくなってしまいます。そうなると「負のスパイラル」に陥ってしまい、資産価値は低下、新規入居者の獲得も困難となり、行き着く先に待っているのはマンションの荒廃、取り壊しとなってしまうのです。
こうした「負のスパイラル」に陥らないためには、住民の皆さんの意識が大切になります。お互いに気をつけながら全員の資産である「住み心地」を守っていくこと。そのために重要なのが、日々のメンテンナスに加え、定期的に大規模修繕を行うことなのです。「マンションの荒廃」は少し大げさに聞こえるかもしれませんが、建物は住民が毎日利用し、さらに年中絶え間なく日光や雨風などの自然の影響に晒されているのですから、どれだけ日々の管理が徹底されていても、少しずつ確実に老朽化していくのは仕方がないことです。ときどき外壁補修などを施し、美観と機能を回復させる機会を設けるようにしましょう。 マンション生活の一大イベントといっても過言ではない「大規模修繕」。大きな費用をかけて数ヵ月間にも及ぶ工事を行うわけですから、一人ひとりの住民がその意義を理解し、自分たちの暮らしを守るために行うのだという意識で実施していくことが大切ですね。